物理 勉強法
物理 勉強法
理系学部を受ける受験生にとって、数学が重要なのは言うまでもありませんが、物理や化学といった理科も重要です。なぜなら多くの高校では履修するのが遅いにも関わらず、入試での配点が大きいからです。そのため、高校3年生の秋以降は、数学や英語よりも理科に多くの時間を費やすことになります。反面、理科は覚える内容が比較的少なく、短期間の問題演習で得点を伸ばすことも可能です。このように、理科は時期とその内容によって、受験勉強後半の伸びを決める要素になるため、きちんとした勉強法の理解とその戦略が大事なのです。この記事では、BROUTEで指導している内容をご紹介します。
入試の試験範囲を確認しよう
まず、勉強を始める前に、受験する可能性のある大学の、入試科目を確認しましょう。
「理科」の科目は、「物理基礎」と「物理」等、基礎が付くものと付かないものがあります。科目名が違うものは勉強内容が異なりますので、まずは受験科目を調べ、選択する理科の科目を決めましょう。
私立大学の理工系学部の場合、多くの大学で「物理基礎・物理」というように指定されていて、「物理基礎」と「物理」の両方の科目を勉強する必要があります。
私立大学の医療系学部の場合は、「物理基礎・物理」か「物理基礎・化学基礎」というように、「基礎科目と発展科目のセット」または「基礎科目を2科目」という指定が多いです。
国立理系の場合、センター試験では「物理」のみになっている大学が多いです。しかし、2次試験では、私立大学と同様に「物理基礎・物理」となっていることが多く、いずれにしても両方の科目をやらなければいけません。
国立文系の場合、「物理」か「物理基礎・化学基礎」というように、「発展科目を1科目」または「基礎科目を2科目」という指定が多いです。
このように、受験する大学によって、多くの科目選択のパターンが考えられますので、無駄な範囲をやることがないよう、受験科目をしっかり調査し、受験勉強に臨みましょう。
単元紹介
物理分野の単元は大きく分けると、「力学」、「電磁気学」、「熱力学」、「波動」、「原子」の5つです。出題される割合としては、力学40%、電磁気学30%、熱力学10%、波動15%、原子5%くらいの割合です。物理の教科としても、出題割合としても、力学が非常に重要です。
このうち、「物理基礎」と「物理」は単元ごとに分かれている訳ではありません。どちらの科目を学習するにしても、5つの単元を勉強する必要があります。
力学
力学は、物体の運動の仕方に関する単元です。中学理科の圧力や力の単元を発展させた内容です。
力学の単元は、さらに10個の小単元に分かれます。
1運動、2落下運動、3力のつりあい、4運動の法則、5剛体、6力学的エネルギー、7運動量、8円運動、9単振動、10万有引力です。このうち、1,2,3,4,6の単元が物理基礎にあたります。
電磁気学
電磁気学は、電気や磁気に関する単元です。中学理科のオームの法則等を発展させた単元です。
電磁気の単元は、さらに6個の単元に分かれます。
1電場、2コンデンサー、3電流、4磁場、5電磁誘導、6交流です。このうち、3の単元が物理基礎にあたります。
熱力学
熱力学は、熱に関する単元です。中学ではほとんど扱っていない内容で、高校で新しく学習します。
熱力学の単元は、さらに3個の単元に分かれます。
1熱とエネルギー、2気体の分子運動、3気体の内部エネルギーです。このうち、1の単元が物理基礎にあたります。
波動
波動は、波に関する単元です。中学理科では、音や光として学びましたが、物理ではそれらを波の式を使って発展させます。
波動の単元は、さらに3個の単元に分かれます。
1波、2音波、3光波です。このうち、1の単元が物理基礎にあたります。
原子
原子の単元は、原子の構造や物理現象について学習します。化学基礎で扱う内容もありますが、物理の中では放射線についても学習します。
物理基礎の範囲には、原子の単元はありません。
物理の重要単元
物理で一番重要な単元は、なんと言っても「力学」です。「力学」という単元は、上に書きましたが、物の動きについて数式で表し、その速さや位置を求めていく単元です。運動を数式で表す、ということは、力学に限らず電磁気や波動でも同様です。つまり、力学での学習が、他の全ての単元の基本事項となるのです。
例えば、力学で万有引力の式は次の通りです。
力学の単元では、なぜこの式で表されるか、ということや式の使い方を学習します。
次に、電気の単元でクーロン力の式は、
磁気の単元で磁気の力の式は、
と表されます。
式の形が全て一緒ですね?これは、電磁気の単元が、力学の数式を元に作られているからです。
このように、力学の単元が他の単元の基礎になるため、物理という教科の中で、「力学」が一番重要なのです。
物理の勉強法
最低限の数学知識を身につける
物理は、物体の運動を数式で表していく教科です。全ての単元で数式を扱うため、ある程度数学の知識や計算能力が必要です。
必要な数学は次の通りです。
等式変形、式の展開、因数分解、平方根の計算、2次方程式、平方完成、三角比の定義
いずれも中学3年生で学習する計算や、高校1年生の数学Ⅰで学習する基礎計算です。特別難しい計算は必要ありませんが、数式の計算に戸惑っているようでは、物理で学習する内容を進めることが遅くなってしまいます。速く、正確に計算できるよう、最低限の数学的知識や計算能力を身につけましょう。また、力学の単元では、力を分解する際に三角比を使って表します。三角比をまだ習っていない場合は難しいので、先に数学の三角比の単元を学習しましょう。
オススメの計算練習教材は、「計算力トレーニング 上」です。
まずは力学の落下運動から
物理の勉強は順序立てて行いましょう。上で書きましたが、物理において一番重要なものは「力学」です。理科は積み重ねの教科なので、始めの単元から順に学習していきましょう。
始めは中学で学習した内容も多くありますが、落下運動のところまで進めていきましょう。この単元は、速度や加速度の計算を身につける単元です。今後の学習内容に大きく関わる重要な単元です。
参考書と問題集を併用し、物理現象を確かめよう
物理は、物体の運動を数式で表していく教科です。当然、数式で表された法則や公式が重要で、それを覚えていくことが大切なのですが、一番やってはいけないことがあります。それは公式の丸暗記です。
例えば、一般的に自由落下の速度公式は以下のように表されます。
自由落下の速度
では、問題を2問解いてみましょう。
(1)y軸を下向きに取る。自由落下させ、t=2 での速度を求めよ。
とする。
(2)y軸を上向きに取る。自由落下させ、t=2 での速度を求めよ。
とする。
答えは
(1)19.6 m/s
(2)-19.6 m/s
となります。
この2問は、かなり設問が似ていますが、なぜ答えが違うのでしょうか。それは、座標のとり方が違うからです。
普通、自由落下のときは、座標軸を下向きに取ります。上に書いた公式はそのようになっています。
しかし、この2問では座標軸のとり方が指定されているため、それに合わせて公式に当てはめる数を変えていく必要があります。
つまり、公式を単に丸暗記しただけでは問題を解くことができない、ということです。
法則や公式の数式を覚えただけでは意味がありません。
その数式が表す物理現象を理解することに意味があるのです。
物理現象とは、物の状態のことです。動いているとか、止まっているとか、速くなっているとか、押されているとか、そのような現象のことです。
この数式と物理現象の関係を、参考書を使って確認しましょう。
一番丁寧に説明されている参考書は「教科書」ですが、硬い言葉で書かれていて、馴染めない人もいるかと思います。
オススメの教材は、「物理をはじめからていねいに」です。
参考書で物理現象を理解したら、並行して問題を解きましょう。まずは公式に数を当てはめるだけの簡単な問題から取り組み、文章のある基本問題、発展問題と進めていきましょう。
オススメの教材は、「セミナー」です。
力学終了後、電磁気、波動、熱へ
物理の基本は力学です。この単元が終了したら、電磁気、波動、熱の単元に進みましょう。これらの中での順番に決まりはありませんが、入試での配点が高いのは電磁気であるため、電磁気から取り組むのがいいでしょう。
これらの単元も、物理現象の理解が重要であるということは言うまでもありません。公式の丸暗記ではなく、公式が何を意味しているのかをしっかり把握しましょう。
厄介な注意点
力学や電磁気を進める上で、一つだけ厄介な注意点となる数学知識があります。それは、分数の微積分と三角関数の微積分です。
物理の中では、微積分を使わなくても答えが出せるよう、学習内容のカリキュラムが組まれています。しかし、公式の導出で分数や三角関数の微積分が必要になっています。分数や三角関数の微積分は数学Ⅲの学習事項であり、それを習うのは多くの高校で3年生です。
そのため、初めて物理を学習する場合は、公式の形から理解し、数Ⅲで学習した後に、公式の導出を理解する、ということになります。