現代社会 勉強法
現代社会 勉強法
大学受験において、社会は暗記科目だと言われています。確かに暗記しなければいけない要素は多いのですが、現代社会は政治・経済の内容が多いため、似たような用語が多く、それを区別するための「背景知識」が重要です。単純に「覚えるだけ」では点数につながらないのです。この記事では、BROUTEで指導している内容をご紹介します。
受験科目に注意
現代社会は、受験科目として使える大学が限られています。特に私立大については使える大学が非常に少ないので注意が必要です。自分の志望する大学で現代社会が使えるかどうか、必ず確認してください!
国公立大学 文系
<センター試験>
国公立大では、通常、5教科7科目が指定されています。文系の学部では、地歴・公民の中から2科目を選択する場合が多いです。現代社会が使用できない大学も多くあります。
例その1:茨城大学 人文社会科学部
日本史A、日本史B、世界史A、世界史B、地理A、地理B、現代社会、政治・経済、倫理、「倫理、政治・経済」から2科目
ただし、公民から2科目は不可
例その2:千葉大学 法政経学部
日本史B、世界史B、地理B、「倫理、政治・経済」から2科目
※現代社会の選択はできません。
<2次試験>
2次試験で「現代社会」だけが指定されることはまずありません。必須科目として指定される可能性があるのは、日本史と世界史くらいです。
選択科目としては、東京学芸大学の一部の学科で使用できますが、それ以外の大学ではほとんど使用できません。
国公立大学 理系
<センター試験>
国公立大では、通常、5教科7科目が指定されています。理系の学部では、地歴・公民の中から1科目を選択する場合が多いです。現代社会が使用できない大学も多くあります。
例その1:千葉県立保健医療大学 看護学部
日本史A、日本史B、世界史A、世界史B、地理A、地理B、現代社会、政治・経済、倫理、「倫理、政治・経済」から1科目
例その2:千葉大学 理学部
日本史B、世界史B、地理B、「倫理、政治・経済」から1科目
※現代社会の選択はできません。
私立大学
<一般入試>
ほとんどの大学で使用できません。関東圏では、帝京大学の一部の学部、東京農業大学の一部の学部くらいしか使用できる大学がありません。
例その1:東京農業大学 国際食料情報学部
日本史B、世界史B、地理B、現代社会、「化学基礎・化学」、「生物基礎・生物」から1科目
例その2:日本大学 法学部
日本史B、世界史B、地理B、政治・経済から1科目
※「現代社会」の選択ができません。
◎アドバイス
受験校選択(滑り止め)のことを考えると、多くの大学で共通している入試科目を選ぶのがいいでしょう。私立文系志望ならば、現代社会を選択することはオススメしません。
<センター試験利用入試>
多くの大学で使用できます。ただし、センター利用は滑り止めの大学を確保するために受験するので、一般入試で使える大学は少ないという点から、現代社会はオススメしません。
科目選択まとめ
私立大学では、受験科目として使用できる大学が非常に少ないので、私立大学一本で受験する人は、現代社会はオススメしません。
国公立大では、比較的レベルが高い大学では使用できません。レベルが高くないところでは、現代社会が選択できます。
歴史科目と比べると、覚えなければいけない量が少ないため、公民に時間をかけたくない生徒にとっては取り組みやすい科目です。
科目紹介
現代社会は、「政治・経済」と「倫理」の科目を合わせたような教科です。実際、学習する中身もかなり共通しています。現代社会という科目は、政治・経済や倫理で学ぶ内容を通して、「今」を学ぶ教科です。「政治・経済」は社会の外面を、「倫理」は人間の内面を学ぶ科目であるため、それらを総合的に判断して「今の世の中が成り立っている仕組み」を学ぶのです。
受験勉強の中で身につけた知識や思考力は、現代文や小論文の土台にもなり、将来的に必ず生きてきます。また、歴史科目に比べると、覚えなければいけないことは確実に少ないため、コストパフォーマンスが高い科目と言えるでしょう。
政治分野
行政権、司法権、立法権の三権について、その成り立ちとともに詳しく学習します。日本の政治の仕組みや、それを規定している憲法について、また、政治の諸問題について学びます。
主な単元は下記の通りです。
- 民主政治の基本と原理
- 人権保障の発展
- 日本国憲法
- 平和主義
- 日本の政治機構
- 地方自治
- 国際政治
経済分野
市場原理について詳しく学習します。例えば、中学公民では資本主義を学習しましたが、現代社会では、資本主義が国の経済とどのように関わっているか、詳しく学びます。
主な単元は下記の通りです。
- 資本主義と社会主義
- 現代の経済社会
- 国民所得と経済成長
- 通過と金融
- 財政
- 労働問題、社会保障
- 国際経済
社会・倫理分野
倫理の科目における、青年期と現代社会について学習します。政治と経済の仕組みを分かった上で、青年期の心の動きを学ぶことで、現代の社会問題を捉えていきます。
主な単元は下記の通りです。
- 環境・資源と人間生活
- 青年期の課題と人間形成
- 現代社会の特質
- 日本の伝統文化
- 現代と倫理
現代社会は「理解」の科目
現代社会は政治・経済と同様に、他の社会の科目よりも、「理解」が重要視される科目です。基本的な用語や制度といった、最低限の暗記は必要ですが、その用語や制度を覚えるためには、まず「理解」する必要があります。
センター試験を例に見てみましょう。
『最高裁判所は、長沼ナイキ基地訴訟において、自衛隊の存在を違憲と判断した。』
この問題に答えるためには、まず長沼ナイキ基地訴訟について正確に理解していなければいけません。ちなみに、この問題の答えは「正しくない」です。
長沼ナイキ基地訴訟は、自衛隊の違憲性に関する裁判です。政府が北海道長沼町にミサイル基地を建設するため、保安林を解除し、住民が取り消しを求めました。
地方裁判所:自衛隊は「違憲」
高等裁判所:憲法判断を回避 → 「統治行為論」が根拠
最高裁判所:二審判決を支持
ということで、最高裁判所の判決は「違憲とは判断していない」ので、この問題文は正しくありません。
ただ、これらのことはもっと深い背景があります。
- 第二次世界大戦の敗戦国として、GHQの意向を受け入れた。
- 憲法9条により、侵略戦争の禁止、戦力の不保持、交戦権の否認が規定された。
- 冷戦の激化によりGHQの意向が変化し、警察予備隊が組織された。
- 警察予備隊は保安隊を経て、自衛隊になった。
- 学会、政府、国民によって、自衛隊が違憲か合憲かは意見が異なる。
- 近年、東アジア情勢が緊張状態にあり、自衛隊の存在は必要性が増している。
- 地方裁判所は違憲判決を出した。
- 高度に政治的なものは違憲審査になじまない、ということで高等裁判所は判決を出していない。
というような、政治家が議論するであろう難しいことが背景としてあります。これらの背景、議論、考え方をきちんと理解していなければ、この長沼ナイキ基地訴訟の経緯は覚えられないでしょう。
現代社会は、社会の仕組みを勉強する科目です。社会の仕組みの中では、制度や法律について学習していくことになります。
あらゆる制度や法律は、それらが制定される背景や経緯が必ずあります。そういった背景知識がないただの丸暗記では、問題にきちんと答えることができません。制度や法律の背景を学ぶということが、現代社会の科目の勉強なのです。
現代社会勉強法
BROUTEでオススメする現代社会の勉強法は、「即出し法」です。
ひとつの単元で参考書、問題集を使ってインプットとアウトプットを両方取り組む方法です。
1.参考書で知識をインプット
現代社会の勉強は、まずインプットから始めましょう。学校の教科書でもいいですが、堅い言葉遣いが難しく感じる人は、市販の参考書をオススメします。テキストに書かれている内容をよく読んで理解し、頭に入れていきます。
このとき、覚えるために重要事項をノートにメモすることもいいでしょう。「書いて覚える」作戦ですね。ただし、テキストの内容を写すような「ノートまとめ」はオススメしません。上にも書きましたが、現代社会は用語や制度の背景知識が重要です。そういった背景知識は量が多く、ノートにまとめるのは膨大な時間がかかってしまいます。きれいなノートを作ることにこだわりすぎないようにしましょう。
オススメのテキスト
- 『陰山のセンター現代社会 パワーアップ版』 学研
2. 即出し法
即出し法は、インプットした後、即、アウトプットする勉強法です。上で紹介した教材や教科書や参考書でインプットします。そしてすぐに、インプットした単元と同じ単元の問題を解くのです。例えば、憲法について学習したら、すぐに問題集に取り組み、同じ憲法についての問題を解きましょう。
人間の脳は、利用価値が高い、と感じたものもよく覚えている傾向にあります。せっかくインプットしたものも、ただ覚えただけでは利用価値が低く、時が経つと忘れてしまいます。そこで、すぐに問題を解く、つまり覚えた事柄の利用価値を高めることで、忘れにくくするのです。
オススメのテキストは以下の通りです。
- 『スピードマスター 現代社会』 山川出版
- 『シグマ基本問題集 現代社会』 文英堂